過去を変えることはできないが、未来を創ることはできる。
多くの人は、戦後から現在までの60年間の日本の歴史を一つの時代として認識していることだろう。しかし、本当の意味で過去を振り返った場合、日本が太平洋戦争に負けた日以降の60年間を、時代的に3分割してみるべきだと私は思っている。
第1ステージは1945年8月15日、日本が負けた日から朝鮮戦争が始まる前日の1950年の6月24日まで(翌25日、北朝鮮軍は38度線を突破して韓国領内に侵攻した)の5年間である。戦闘はアメリカを始めとする西側諸国や中国を巻き込んで、38度線を境に行ったり来たりの攻防戦を繰り返し、3年後の1953年7月27日の終戦まで約3年間続いた。この戦いは、日本にとっては復興へ向けての最大のチャンスとなった。朝鮮戦争がなければ、戦後の日本の繁栄はあり得なかったかもしれないというほどの出来事だった。これを契機に、アメリカを中心とする自由主義諸国、ソ連を中心とする共産主義諸国との間で決定的な対立を生む冷戦が始まった。この時にアメリカはそれまでの日本弱体化政策を改め、日本を極東最大の同盟国として育て、アジアにおける自由主義諸国連合の防波堤にするという大きな政策転換を図ったのである。
第2ステージは、1950年6月25日から1989年12月29日までの40年間であり、日本にとって本当に素晴らしい時代だった。しかし、おそらくこんな時代は二度とは来まい。
89年、戦後の夢のような時代が終わりを告げるのを見計らったように、社会主義諸国に異変が起こっていた。89年にベルリンの壁が崩壊し、ついに91年12月21日、社会主義国家の牙城ソ連が崩壊したのだ。この時、アメリカは気が付いた。冷戦が終わり、自由主義圏の勝利が明白になり敵がいなくなると。ところが、その敵がいなくなってふと自分の周りを見渡してみたら、身内と思って育てていた日本という飼い犬に噛まれていたことを。こうして、1989年12月29日に1つの時代が終わり、正月を挟んだ翌90年初頭から日本の株が崩れ、新しい時代が始まった。
第3ステージは、今まさに私達が生きているこの時代である。そしておそらく、この第3ステージが終わるのは2005年、つまり今年だ。1990年から2005年のバブルの崩壊から現在までだ。第3ステージはいろいろなことが起こった。株価は2003年4月に7600円で大底を打ち、最盛期の約5分の1になった。土地は東京都心の一等地でも、ひどいところは一時の8分の1、10分の1まで下がった。40年間で膨らみきった日本の経済は、この15年ほどで一気にぺしゃんこになってしまった。本来ならばそこで、政治家や官僚、そして国民も一丸となって、来るべき時代に相応しい新しい産業構造や国家の形を模索しなければならなかったはずだ。ところが政治家や官僚は問題を直視しようとせず、延々とツケを先送りし続けた。そのしっぺ返し、しかも取り返しがつかない規模の大激震がいよいよ2006年から始まろうとしている。
つまり、そうした時代こそが、2006年から2030年にわたる第4ステージだ。既にその前兆は至る所に現れている。例えば増税論。そして近い将来、金利が急騰するかもしれないという話も語られ始めた。今の日本の長期金利の1.55%(2005年1月)という水準は、国家が極度の不健康状態であることを示す値なのである。ではもし、長期金利が平常の5%、6%になったらどうなるだろう。日本は今、国・地方・財投(財政投融資)を合わせて1100兆円の借金を抱えている。その金利がある日突然1%台から5%台に上がれば、毎年利息分が最低でも30兆円程度増えることになる。国の信用力を背景としている国債が大暴落し、それが引き金となって金利が上がるという負の連鎖によって、国の経済はあっという間に瓦解する。
ローマ帝国もその滅亡の直接の原因は国家破産だったのだ。帝国末期には全土をすさまじいインフレが襲っていたという記録も残っている。日本国家が野放図に借金を重ねた末路に待っている第4ステージ、それが「国家破産時代」なのである。これが「次にくる波」の正体だ。次にくる時代を一言で表現すると、「二極分化の時代」ということになる。つまり、「勝ち組」と「負け組」にますます分かれていく時代なのだ。
国家が破産すれば、これまでの歴史を見てわかる通り、国内にはすさまじいハイパーインフレの嵐が吹き荒れ、大増税や徳政令など、政府は国民の資産を奪い続けるような政策を取らざるを得なくなる。
日本国が破産する可能性は、このままいけば95%以上の確立である。この数字は2000年の夏、経済企画庁(当時)が著した論文の中に、「従来型の財政運営を続ければ、財政赤字は拡大し、95%の確率で税金では返せなくなる」とある通り、当の国自身が認めている事実だ。国債という名の借金を無制限に重ねた結果、日本国は後戻りできない「ポイント・オブ・ノーリターン」をついに越えてしまった。
やがて来る国家破産の時代は、相当な長期に渡る厳しい時代となるだろう。あなたがもし50歳以上の方なら、自分が生きているうちに日本の再生を見ることができないことを覚悟すべきである。つまり、日本が破産状態から抜け出すまでには、長ければ30年近い期間を要することになるということだ。
小泉首相が郵政相時代にテレビ番組に出演し、「財政投融資には莫大な不良資産が隠されている。その財投の出口には92もの外郭団体が群がっていて、そこにある不良債権は民間の不良債権よりずっと深刻だ」、と警告していた。私の推測では、焦げついている財政投融資の総額は200兆円(これは財政投融資総額のおおよそ半分)と見ており、国と地方の借金に次いで、国の財政を圧迫する第三の要素となっている。「消費税35%にしないと財政破綻する」という論文を経済企画庁が2000年に作成している。
ロシアが財政的に破綻した時、つまり、海外に対して債務不履行をした98年の時点で、国の債務はGDP比で60%の水準だった。アルゼンチンでも同様だ。GDPの2倍の借金を抱えるということが、いかにとんでもない事か、これで想像がつくだろう。それでも日本がなんとか持ち堪えている理由は、政府や行政の頑張りではない。個人金融資産1400兆円の信用力、そしてトヨタやキャノンなど、世界的企業が上げる貿易黒字の存在である。
秒読みに入った“Xデイ”。
個人金融資産1400兆円−個人の借金250兆円=本当の個人金融資産1150兆円
国の借金1100兆円−本当の個人資産1150兆円=50兆円
国・企業が持つ資産100兆円+50兆円=日本国全体が持っている資産の余力150兆円
150兆円÷毎年の政府の借金60兆円=2.5年しかもたない!
Xデイは2007年!
国家破産を迎えたとき、歴史上、3つの大きなことが起こっている。
- ハイパーインフレ(国の信用力が落ちて、円の通貨価値や国債の価値が暴落)
- 大増税
- 徳政令(デノミと預金封鎖)
社会的な影響
(1)金融不安(取り付け騒ぎなどで銀行からお金がなくなる)
(2)トリプル安(株・国債・通貨の3つのすべてが暴落する)
(3)社会不安(人心が荒廃し、治安が悪化する)
経済が破綻すると中産階級が没落し、極端なお金持ちと貧困層に二極分化することは既に歴史が証明している。資産家はだいたいにおいて慎重であり、お金に対して非常に敏感である。その結果、危機を察知するといち早く海外にお金を逃がすか物に換えてしまうので、比較的に生き残りやすい。国家破産、あるいはハイパーインフレを経験したどの国にも共通する傾向だ。トルコ、アルゼンチン、ロシア、いずれも同様に中産階級が没落し、金持ちと貧困層の二極分化が急速に進んだ。
<お金の鉄則7ヵ条>
- 自分の資産を詳しく把握する
- 分散投資をする
- ハイパーインフレ下の不動産を過信しない
- 流動性の確保
- ローンはすぐに返さない
- 運用に回せる余裕資金を確保する
- お金や経済について勉強する
以上が本書の概要である。われわれの周りを見回すと、昨年ぐらいから増税論議、社会保障制度改革を含めた医療政策の転換などが一気に噴出した感じが強い。今年度の社会保障費は20兆2240億円であり、一般歳出47兆3000億円の43%を占めるに到っている。本書の中にもあったが、国・地方などの借金は1100兆円、金利負担だけでも大変である。本書に書かれていることは、事実に基づいているわけであり、あながちオーバーな表現とは言えない。現実は読者の皆さんがどのように評価し、判断するかであろう。
個人的に思うことは、自分なりに情報を集め、分析し、それをどう評価するかである。今年になって日本のビジョンが発表されたが、その中にも、消費税の増税が記載されている。国家の運営は国民が納める税金の中で賄う以外に方法はない。今の借金は消費税を35%に引き上げないとやっていけないという官僚の発言にあるように、消費税1%で約2兆円の税収が見込めるとすれば、35%の消費税収入は70兆円である。そんなことが起きることもあり得る時代に入ったということである。
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