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大逆転の時代表紙写真

大逆転の時代 日本復活の最終処方箋

著  者:山崎 養世
出 版 社:祥伝社
価  格:1,680円(税込)
ISBNコード:4−396−44003−0

バブルが崩壊した1990年から株価が3倍になり、日本は株価が4分の1になりました。アメリカの株式の上昇を支えてきた主役は、ここ20年間に生まれた企業です。マイクロソフト、インテル、ウォルマート、シスコ、ヤフー、デル…。今、世界のトップを作るこうした大会社は、30年前には影も形もありませんでした。ところが、日本のトップ企業を考えてください。トヨタ、NTT、ソニー、ホンダ、松下、銀行…。確かに、立派な会社です。しかし、どれも50年以上前に生まれた会社ばかりです。

しかし、これからは違います。ソフトバンク、楽天、ライブドアといったIT企業ばかりではありません。ユニクロ、ドン・キホーテといった有力なサービス流通業も出てきています。こうした新しいビジネス・モデルを引っ提げて登場する企業が主役になる時に、新しい成長が生まれます。株式市場の大逆転の時代は始まっています。

本書は、第一章:「東京が没落し、未体験の危機が来る」、第二章:「迫られる発想の転換」、第三章:「高速道路無料化で日本が変わる」、第四章:「日本列島再生論」、第五章:「日経平均株価10万円が日本を救う」、終章:「年金問題が一気に解決」、の構成になっています。

“改革”という名の政府案は暗澹たるもの。もし仮に年金一元化が実現したとしても、消費税を20%までに上げなければ原資を確保できない状態です。そうでなければ、これまでの450兆円にも及ぶ積立金不足をすべて現役世代に負担させるしかありません。それどころか、不安は増幅するばかりです。東京を含めた首都圏で、1人当りの所得は2030年には25%減少するという予測数値があります。首都圏に集中している労働人口が400万人規模で減り、高齢化が加速度的に進む結果です。

このまま手をこまねいていれば、国家財政は破綻し、貿易赤字に転落していき、60%以上を海外に頼っている食料の輸入すらままならなくなります。もちろん石油エネルギーの輸入も難しくなります。日本は間違いなくどん底へ向かっていく。

通常、景気が悪化し、そこから立ち直っていくプロセスは、おおよそ次のようなものです。

  1. 溜まった在庫を減らすために生産調整を始める
  2. 生産設備、人員の見直しを行い、設備の廃棄や人員の整理などを実施する。この時、強い企業は体質改善も行なう
  3. このための費用が一時的な出費となり、赤字が増える
  4. 収入の減少に合わせ、支出面の削減を実施する。この時期が一番赤字が増え、悪い状況となる。
  5. この時期を過ぎると体質的に身軽になり、低収入でもなんとか維持できるようになる。それは、わずかな収入の増加でも、ストレートに利益に結びつきやすい体質となり、そんな状態をしばしば「自律回復」などと呼ぶ
  6. 政府の金利政策などが効き始め、しだいに生産が回復し、それとともに利益が同じように増加し、黒字の拡大に結びつく

このようなプロセスを何度となく繰り返してきたのが、これまでの日本の景気回復のおおまかな過程です。しかし、今は状況が違っています。最大の違いは、企業が生産の拠点を中国、東南アジアなどの海外にシフトさせているという点です。

日本経済が崩壊に向かう最大のファクターは、やはり財政赤字です。地方を合わせると、1000兆円近い額になると言われています。しかも、財政投融資などによる損失などを隠している部分が民間の不良債権以上にあるとも言われていますから、そうとう深刻な数字です。さらに、日本全体の高齢化で負担が増えるという要素があります。それ以外に、特殊法人に代表されるような癒着とか、利権で無駄遣いされる部分があります。道路公団の問題や郵政民営化議論を見ても、根本的に解決される見通しはまったくありません。道路公団は40兆円もの借金の返済を先送りにしました。NTTの借金の3倍です。

現在、国民が持っている資産は総額1400兆円と言われていて、経済を動かす原動力として作用しています。そのうち、住宅ローンなどの借金が300兆円ほどありますから、残りの額は1100兆円ということになります。国が国債を発行して借金をする場合、最終的にはこの金融資産というお金で買ってもらうことになります。つまり国債という国の借金が金融資産を超えたら、もう国民は国債を買うことができなくなる理屈です。ただし、国債を直接個人が買っている部分はわずかです。個人がお金を預けた先の銀行、郵便局、保険、年金、農協などが国債を買っているのです。

先に示したように、国の借金は明らかにされていない部分を加えると、既に1100兆円に達しています。この意味は、国民の金融資産をほとんど食い尽くしてしまっているということです。つまり、国債を買う余力がなくなっているということです。そうなると、どんな現象が起きるでしょうか?買い手がなくなると、国債の値段は暴落します。値段が下がると、金利が上がります。

小泉政権の進める構造改革は、基本的に官と民の関係を見直すことに主眼が置かれています。道路公団と郵政の民営化も、もともとの狙いはそこにあります。しかし、これまでの経過を見ると、所期の目的が達成されているとは思えません。本当の構造改革は、従来の経済構造と社会構造そのものにメスを入れ、大胆に変革していくことです。その点、小泉構造改革は、製造業を中心に大都市に資源を集中させるという従来の手法から一歩も進んでいないのです。それどころか効率を重視して、地方を切り捨てようとしている方向は明らかで、これは逆行にしかなりません。

日本は世界第二位の自動車大国であるにもかかわらず、人間の移動手段としての高速道路の利用率は極めて低いのが実情です。例えば、旅客輸送に占める自動車の割合は66%。しかも、そのほとんどは一般道路で、高速道路に至っては5%に過ぎません。日本の高速道路料金が異常に高いのには、はっきりとした理由があります。大きく分けて、以下の3つの理由です。

  1. 借金で造り続けるから料金の半分以上が金利の支払いに充てられている
  2. 高速道路を使って取られる税金が高速道路に使われていない
  3. 建設コストを下げる仕組みがない(アメリカの高速道路の建設単価は1キロメートル当り1.6億円、日本は67億円)

日本の人口密度は、平均で1平方キロ当たり340人です。極度の一極集中になっている東京の区部が1平方キロあたり1万人というのは、取りあえず納得がいくとして、ちょっと驚かされるのは県庁所在地など、各道府県の中核都市の人口密度が4000〜6000人と多いことです。それぞれの地方でも、過密と過疎という大きな落差が生じていることの証拠です。

今、日本の人口は急激に減りつつあるのに、実は沖縄は人口が増えています。50年前に80万人ぐらいだったのが今、140万人ぐらいになっている。沖縄も近年、流入が増えていますが、出生率が他県より高くなっていますから、やはり自然増です。経済的には決して豊かな県とは言えませんが、沖縄という土地に根ざした生活の安定感があるのでしょう。風土、暖かさ、家族の絆の強さ、気楽さという環境、本音ベースで生きられるという独自の価値を含めたものが沖縄の資産ということです。その視点から出発すれば、これからの沖縄はユニークな発展を遂げるだろうと思います。

今、日本の平均株価は、日経平均でいって1万円を少し超えた程度。15年前の1989年にはあと少しで4万円だったのですから、4分の1に過ぎません。バブルが崩壊したからと簡単に片付けるわけにはいきません。なぜなら、今、日本の上場企業の利益水準はバブルの頃を上回って史上最高なのです。しかも、バブル末期の1989年には、金利は6%を超えていました。ところが今、預貯金の金利はゼロに近い。株の配当が金利を上回るという異常事態になっています。経済の教科書には、「企業の利益が高くなり、金利が低くなれば株は上がる」と書いてあります。

私は日本が改革に成功して日経平均株価が10万円になる日が、遠からずやって来るものと信じています。平均株価が10万円になるということは、本当の意味で構造改革を進め、日本経済が新しい活力を生み出すということです。そのためには、次の4つの要素が重要なポイントになってきます。

  1. 交通・情報の地方格差を解消する(高速道路無料化が不可欠)
  2. 農業を復活させる、田園からの産業革命を成し遂げる
  3. 郵政資金を民間経済と共生させて積極活用する
  4. 財政の無駄遣いをなくし、国民の負担を軽減する

1970年の日本の食料自給率は60%でした。ちなみに主要先進国は、ドイツ68%、イギリス48%、スイス48%でした。そして30年経って2001年を見ると、ドイツ99%、イギリス61%、スイス55%と大幅にアップしているのに対して、日本は40%にまで大幅にダウンしています。

郵便局は全国に24000の拠点を持ち、郵便貯金、簡易保険という形で国民から預かった350兆円もの巨大資金を持っています。これを中小企業を中心にした融資に振り向けるシステムを作ったらどうか、というのが私の提案です。郵政問題の最大のポイントは、巨大な郵政資金を政府がリードする財政投融資などに振り向け、財政赤字を加速しているという点です。

これからの社会は、確実に高齢化時代に入っていきます。資産とか、お金という視点でものを考えた時に、これからの高齢化社会はどういうものになるでしょうか。給与など形で毎年もらうフローの所得よりも、実は、今持っているストックの資産の方がより重要な時代になってくるということです。

よくアメリカは個人の貯蓄率が低いと言われますが、これは誤解です。アメリカで少ないのは銀行預金だけで、その分、株や投資信託という銀行預金よりリターンが高くなるもので持っているというだけのことです。そういうものを含めたアメリカの金融資産額は全体で約4000億兆円ありますが、日本は約1400兆円です。アメリカの人口は約日本の2倍ですから、つまり1人当りの額としても、断然多くなっています。この意味は、国も個人も資産の収益率を高めるために、金利の低い預金ではなく、年金・株式・投資信託などに投資して、同じお金からのリターンを高くするためのいろいろな努力と工夫をしているということです。

以上が本書の概要です。著者の山崎養世氏は東京大学経済学部を卒業後カリフォルニア大学ロサンゼルス校で経営学修士号(MBA)取得。大和證券に入社後にゴールドマン・サックス社に移り、日本での資産運用ビジネスを立ち上げる。ゴールドマン・サックス投信株式会社の代表取締役社長に就任、のち、山崎養世事務所を設立。

著者はあとがきで、「アテネオリンピックは日本の若者のパワーを見せつけるものでした。日本経済の大逆転も始まっています。企業はリストラ、海外進出、経営努力によって、実は、バブル期を上回る収益を上げるところまで出てきました。しかし、株式市場はこれからの高齢化、政府の破産、双子の赤字、中国の台頭、石油などの資源減少…日本経済が破局に向かっていることを察知しています。それは、日本が20世紀の国の形から脱け出せずに、東京一極集中の高コストのままで没落していく、と予想しているからです。ここで、大逆転の時代に日本が踏み込めば評価は一変します。」と述べています。

本書で示されているように、日本が抱える問題はあまりにも多い。財政の問題1つ取り上げても、例えば、プライマリーバランスを2010年にはゼロに持っていくと小泉内閣は公言していますが、まず無理だと思います。日本国の破局ということもあり得るのです。日本が構造改革を本気でやっていけば大逆転もあるかもしれませんが、なかなか難しい問題です。


北原 秀猛

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