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ニュービジネス活眼塾 アタッカーズ・ビジネススクール講義録

著  者:大前 研一
出 版 社:プレジデント社
価  格:1,500円(税込)
ISBNコード:4−8334−1824−X

講義は半年間で、毎年2回開催されている。いま現在19期の真っ只中である。卒塾生は約4000人。彼らが起業した会社の数は600社にのぼる。このアタッカーズ・ビジネススクールでは、毎回私の講義が10時間組み込まれている。始業式と卒塾式にそれぞれ5時間ずつ話をするならわしになっている。

本書の構成は、第1章:古い秩序を“起業”によって破壊せよ、第2章:知的イノベーションに挑戦しよう、第3章:デジタル時代における新事業の発想法、第4章:事業家として成功する条件は何か?、第5章:染色体異業種企業「ゴジラ」のシステムに学べ、第6章:「事業構想力」はこのように育てる、第7章:今、事業を起こす必要なものは何か?、第8章:21世紀は事業チャンスが無限にある、となっている。

事業を起こす、あるいは起業家となる上で、心に銘記しておかなければならないことは、「ベンチャー」と「アドベンチャー」とは違う、ということである。成算のない冒険はできないし、あとは野となれ山となれというのでは困る。ベンチャーで成功するには、必要条件と十分条件を満たしていなければいけない。「自分には見える、見つけたぞ」という新しい発見が重要なのである。事業が成功するための十分条件としては商品、あるいはサービスの設計だけでなく、それを創り出すところ、アフターサービス、ファイナンス、人材の調達育成といったビジネスのシステム、すなわち会社としてのシステムが整わねばならない。

アメリカのベンチャー企業の場合は、立ち上がりから売上100億円までが第1期。そこから1000億円までが第2期で、それ以降が第3期となる。立ち上がってうまくいったら必ず売上が1000億円までいき、途中で止まる会社は少ない。日本は成功の桁が1つ低い。売上10億までを第1期とすると、100億までが第2期。リスクなしにベンチャーはできない。すべて安全な橋を渡って、どの瞬間も必要十分条件を満たして、順風満帆だったという新事業は存在しない。

知的に怠惰な人は事業家には向かない。事業家の資質を身に付けようと思ったら、これでいいのかと質問を常にすることである。事業を起こすには、膨大な数のアイデアがなければならない。1つのヒット商品が誕生する裏にはアイデア段階、評価段階、開発段階、マーケット段階とさまざまな絞込みが行なわれるが、その度にアイデアは、数の上では10の3乗、10の2乗、10の1乗、10の0乗(すなわち1)という形で減っていく。つまり、1000のアイデアの中から成功するものは1つ、というのが世の常である。

日本の世帯は4500万世帯、関東圏の人口は3300万人、東京都が1200万世帯、関西圏が2000万人、関西全体のGDPが6000億ドルである。「週刊ポスト」80万部、「週刊現代」60万部の発行部数となっている。

戦略を考える場合、3つのCがキーワードである。最初のCはカスタマー(顧客)である。次のCはコンペティター(競争相手)、そして3番目のCはカンパニー(自分の会社)。戦略をつくる時は、この3つのCを組み合わせて行う。つまり、「カスタマーニーズに対して、コンペティターよりも相対的に優位な製品、またはサービスを持続的に提供すること」。これこそが戦略の定義である。

イノベーションというと、一般的には技術的なものだけを考えがちだ。しかし実際は、経営システム、人材採用、コミュニケーションの方法など、あらゆる経営分野において、従来なかったものの考え方・やり方は、すべてイノベーションの範疇に入る。

第一の波は農業化社会の波。第二の波は工業化社会。第三の波はデジタル情報化社会の波だ。このデジタル情報革命によって、ありとあらゆるものが変わろうとしているのである。

いろいろな起業家のエピソードを読んでみると、成功者には共通のパターンがあることがわかる。私が見出したパターンとは、「インクィジティブ・マインド」だった。「これでいいのかな?これで正しいのかな?」と思うその「質問する心」が成功者たちの共通項目である。

インターネットを有料化しようと思ったら、よほどの強力なコンテンツを持っていなければダメなのである。通常は広告で稼いでいる。つまり、無料にしてなるべく多くの人がサイトを訪れるようにし、それを武器に広告料をもらうのである。

ベンチャー企業などの例で、創業から5年まではうまくいったが、その後ダメになるというパターンをよく見かける。これには大きく分けて2つの理由がある。1つは、確かに秀逸なアイデアで緒戦は勝ち抜いたが、ほどなく他社に真似され、しかも大規模展開や大量販売などによる安値攻勢に対抗できずに大打撃を被ること。もう1つは、仲間の増やし方や選び方を誤っていることだ。ことに自分の能力に頼り過ぎる起業家が陥りやすいのは後者の例だろう。自分にすべてを求めるのではなく、自分に足りないものを見つけ、それを補うための対策を早め早めにとっていくことは、起業家が事業に成功するパターンの1つである。

一方、自己資金が少なくても事業は起こせる。BOT(ビルト・オペレーション・トランスファー)という新しいプロジェクトの進め方がある。PFI(プライベート・ファイナンス・イネシアティブ)ともいうが、要するに、自分の資金を全部注ぎ込まなくても巨額の事業が遂行できる方法だ。簡単に説明すると、それは、テナントや広告主などが将来支払うであろう金額を現在価値に直して前払いしてもらい、それを事業資金に充てるという資金調達法である。ある金利水準に将来のリスク率を加味した利率で割り戻すわけだから、テナントや広告主にとっても将来の支払い金額と比べて相当割安になり、損な話ではない。ただし、そのためには、事業やその空間が魅力的であり、多くの人がそこに集まるという条件を満たす必要がある。

現在は、大企業が中小企業を呑み込むのではなく、「速い」企業が「遅い」企業を呑み込むという動きが目立っている。“Fast is big,Big is slow ,Fast is everything.”これは、インターネット関連の部品メーカー、シスコシステムズ会長ジョン・チェンバースの言葉だが、「“速い”ということが何より重要なのだ」、と彼は言う。シスコシステムズは1984年に創業した会社だが、現在売上高は1兆3000億円。現在の従業員は14000人。事業計画を立てる時には、スケーラビリティー(会社規模能力)を把握しておくことが必要だ。規模を拡大するためには、それに受け応える器を備えておかなければならないのである。

1985年のレーガン革命前後の時期が、新しい時代の幕開けであった。この革命は、染色体異常企業を産み出した。私はこれらの企業を「ゴジラ企業」と呼ぶ。そのゴジラ企業が作り出した新しい成功の指標は、シスコシステムズの例でわかるように、昔の優れた企業の指標の10倍も大きくなっているのだ。従来なら10年で売上高1000億円という1つの指標が、今では10年で1兆円。ではどうすればゴジラ企業になれるのか。調べてみると、次の6つの共通項が見える。

  1. 日本でいう社長にあたるチーフ・エグゼクティブ・オフィサーが情報担当責任者である、チーフ・インフォメーション・オフィサーを実質敵に兼務している
  2. 世界でもトップの製造力や設計力などを持っている企業を、すべてウェブベースで自分の会社につなげていることである
  3. 組織がピラミッド型ではなくフラット型で、かつアモルファス、つまり結晶でいう非晶質であることだ
  4. いろいろなことに手を染めないことだ
  5. 施設にはあまり投資せず、人間そのものに対する投資に力を入れていること
  6. アービトラージという概念を持っていることだ。すなわち、世界で最も高品質・低価格の商品を探し買ってきて、それを使い切るのである

これから起業しようという人に一番大切なことは、自分がやろうとしている事業が単なるアイデアではなく、コンセプトにまで深められているかどうか十分検討しておくことだ。要するに、コンセプトというのは、それ自体で“必要十分条件”になっていなければならないということなのである。

事業を成功させるにはアイデアではなく、ビジョンをコンセプトまで落とし込み、必要十分条件を満たす事業計画を策定していなければならない。必要十分条件は何かというと、お客がいて、そのお客が経費を十分カバーするだけの値段を払ってくれるということである。このために事業計画では数字上の計画だけでなく、人事、技術、営業、提携などの計画案も策定されなくてはならない。

要するに一人勝ちの経済というのは、基本的にiモードみたいなギミック、おとりみたいな強烈な引きのあるものを使っている。これが儲かる仕掛けなのだ。iモードの戦略が我々に教えてくれる最大の教訓は、買ってくれる動機を作ってやれということなのだ。そうすれば絶対に買うし、使ってくれる。今、一人勝ちしている企業を見ると、すべて顧客の購買動機がはっきりしている。一人勝ちの経済を見たらわかるように、一人勝ちしている企業は、エンド・ツゥ・エンドのトータルソルーションでお客さんのインターフェースから最後のデリバリーまで、1社で全部面倒を見ている。どこからかラッキーに調達しているとか、ラッキーにお客さんを捉えているというのでは一人勝ちはできないからだ。

重要なことは、収益を決める3つの要素

  1. 値段を高くコストを低くする
  2. 個数をたくさん売る
  3. シェアを獲得する

この3要素を自分で管理できるか、自分で影響力を持つことができるか、ということなのである。

以上が本書の概要である。本書の重要な部分でもある、企業を成功に導くための思考回路である。知的好奇心と執着心の旺盛さが起業家の基礎的条件、起業家の最低条件として、何かいい事業のアイデアが浮かんだら、そのアイデアをコンセプトにまで深め、練り上げていく粘り強い根気と執着心が重要と説いている。そして、これからの時代に必要なのは「構想力」だという。要するに、「これからはこういうことが商売になるんじゃないか」ということが、あたかも見てきたかのように見えるかどうかということだ。そして、その構想力を磨くには、

  1. これは本当に正しいのか、これはどういう意味なのか、どんな物語になるかをとことん考え、それを紙に書くことである。これを何度も繰り返す。
  2. 構想力を持った強い刺激を与えてくれる人にどんどん会いに行って、いろんな話を聞くことである。
  3. 自分で設問を設定して、自分ならどうするかを考えることである。

やはり出発点は自己否定である。自分は何がやりたいのか、どういう人間を目指そうとうとしているのか、前向きに考え、自分と向き合うことである。


北原 秀猛

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•  ベンチャー
•  インクィジティブ・マインド
•  質問する心
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