グッドウィル・グループは2005年6月期で売上高1400億円、年率5割成長を実行している最中です。我々が誇りに思うのは、1400億円のうちM&Aで作った売上は100億円程度であり、あと1300億円はすべて我々自らが作り上げたものであるということです。M&Aも当然有力な手法ではありますが、それは現在価値を得るものであり、未来の成長した企業価値を予測し得るものではありません。しかし、自ら作り上げた売上の場合は、過去の実績が有力な将来の成長予測の尺度になり得るのです。世の中は「原因があるから、結果がある」のです。
本書の構成は、第1章:いつか、でっかいことをしたい、第2章:どん底からの再起、第3章:何が成功を呼ぶのか、第5章:ビジネスと社会貢献の両立、第5章:プロ経営者の発想と技術、第6章:挑戦者たちの社会を、となっています。
「ゼロから1を創ることを知り、その尊さを一番大切なものにする」。これは、私が常に大切にしてきた考え方です。「ゼロから1を創る」考え方を持つには、どうやったらソニーを創れるか、どうやったらトヨタを創れるかを考えるということなのです。
グッドウィル・グループの企業理念は、「拡大発展・社会貢献・自己実現」という3つの四字熟語になっています。ジュリアナ東京が成功したのは、ディスコの本質を突く戦略・戦術を徹底したからです。ディスコでも、他のビジネスでも同じです。本質を突かなければ、継続的な成功は絶対に望めません。これを私は、「センターピン理論」と呼んでいます。ジュリアナ東京が成功したのは“いつも大勢の人がいて、毎日盛り上がっていること“、すなわち「常に満員であること」。これこそが、ディスコのセンターピンなのです。そのために一般のビジネスマンやOLの人達に興味を持ってもらうように、半年前からメディアにリリースしてもらったり、平日用のインビテーションカード(招待券)を大量に用意し、DMとして発送しました。しかも何月何日限定のカードです。
<グッドウィル・グループ十訓>
一、お客様の立場にたて、究極の満足を与えよ
一、夢と志を持ち、常にチャレンジせよ
一、困難の先に栄光がある、逆境を乗り越えよ
一、物事の本質を見抜け、雑音に動じるな
一、原因があるから結果がある、公正に判断せよ
一、積極果敢に攻めよ、守りは負けの始まりなり
一、スピードは力なり、変化をチャンスと思え
一、自信を持て、謙虚さと思いやりを持て
一、笑顔と共に明るくあれ
一、正しくないことをするな、常に正しい方を選べ
もちろん私自身、経営判断において、この十訓が重要な指針となります。
私には、人口1万人で損益分岐点の40人を確保していくべきという考えがありました。そのため、1200箇所が選ばれたわけですが、ニーズはあっても認知のスピードは各拠点によってバラツキが出ます。全体の認知のスピードを速めるため、コムスンは資金調達で準備した250億円を投資し、さまざまな努力をしました。3ヵ月間で実に50億円もの広告宣伝費を投入したのも、その一例でした。
事業のスタート以来、コムスンは順調に成長してきました。しかし、何より大事なことは、しっかりとビジネスの本質を見抜くことです。介護サービスの場合のセンターピンは、「居心地の良さ」なのです。お客様が何を望み、何をすれば喜んでもらえるかを常に考えている。それは、一言でいえば「お客様第一主義」という言葉で表現できます。言葉で言うのは簡単ですが、コムスンはこれを本当に貫こうとしています。お客様の満足度を最高にすることを第一としている。だからこそ、コムスンは強いのです。お客様第一主義とは、その人にとって最もふさわしいあり方を一緒に考え、創造していくことだと私は思うのです。
企業が成功する、つまり世の中に貢献でき、社会の役に立つためには、私は3つの条件をクリアしなければならないと思っています。「夢と志」を持つこと、「技術と仕組み」を持つこと、そして、「執念と鉄の意志」を持つことです。
マラソンで1位になる人というのはどんな人でしょうか。よーいドンとスタートして、陸上競技場を出ると、第一集団、第二集団、第三集団が何百メートルか離れてできてきます。こうなった段階で、第一集団にいない人で優勝した人を私は今まで見たことがないのです。確かに、第一集団にいるからといって優勝できるとは限りません。だから、それは必要条件にすぎず、十分条件ではないかもしれません。しかし、第一集団にいなければ、優勝することは大変難しいのです。最初から全力で行き、第一集団に入って走っていくことがとても大切になるのです。
私は人を見る時に、3つの大事な要素をチェックしています。「能力」「情熱」「考え方」の3つです。そして大切なのは、この3つは足し算ではなく、かけ算で見るべきだということです。言い換えれば、一つでもゼロだと、トータルもゼロになるということです。
小学校で本来、最初にやらなければいけないことは、“何のために自分は生まれてきたのか”という問いかけを子ども達自身にさせることです。「自分は世の中に対して何をすべきか」、「将来何になりたいのか」、「それはどういう意味があるのか」…。先生は子ども達に、こうした問いを発し続け、働きかけていかなければならないのです。
ハーバードもMITも入学するのも難しいけれど、入学してからも大変な毎日が待っていると言います。入学したら、のんびり過ごしがちな日本の大学生とはまったく違います。なぜか?それは、目的意識の差、将来目指しているものの差、夢と志の有無の差だと思うのです。自分が何のために生きているのかわからないということの一番の問題は、プライドを持てなくなることです。
人は適材適所にポジションを与えればやる気を出し、持てる能力を最大限発揮します。それを正しく評価すれば、やる気はさらに上がり、パフォーマンスも上がってきます。そいう環境を社内に構築することができれば、会社は自然に大きくなると私は考えています。
ニューヨークで「MEGU」という名の日本食レストランが今、大ブレークしています。今やニューヨークの人達で、ほとんど予約が取れないほどの大人気になっています。この「MEGU」は、私が実質的なオーナーとして手掛けたレストランなのです。味、雰囲気、サービス、インテリア…。2年半の準備をし、すべてにこだわり抜いて作りました。「ニューヨークタイムズ」の情報雑誌のランキングでは、2004年の「ニューヨーク500ジャパニーズ・レストラン」の中で第1位を獲得しました。なぜ、こんなことをしているのかと言えば、グッドウィル・グループの新しいビジネスとして構想し、既に準備を始めているということです。「人材ビジネス」「健康ビジネス」に次いで、新たな軸である「感動ビジネス」を加えようとしています。私達が目指しているのは、サービス業界のコングリマリットになる、トップになることです。
以上が本書の概要です。著者の折口氏は父親の会社が倒産し、裕福な家庭から不幸のどん底になる経験をしています。自分の生活費を捻出するため、土・日は身分を高校生と偽って、マクドナルドでアルバイトをする。高校進学も家に余裕がなく、自衛隊関係の神奈川県横須賀市の陸上自衛隊少年工科学校に入学。毎月給料が支給され、衣服、住居も無料、月7万円の給料から2〜3万円を家に仕送りする。少年工科学校卒業後は、防衛大学校に入学。その後、日商岩井に入社し、7年間在籍する。将来像として、30歳をメドに独立して創業社長になることでした。7〜8年商社で働ければ、一通りの実務は覚えられ、判断力や交渉術も身に付くと考えたのです。
以上の経歴、経験が著者の人生哲学を育み、自分の生きていく道を明確にしたのではないかと思われます。本書の中で、企業として成功する条件を3つ挙げていますが、2つ目に「技術と仕組みを持つことです」と言っています。「誰もが納得する経営計画を作る。優秀な人材を集め、適材適所に配置し、育てる。情報化を進め、合理化できるところは徹底的に合理化する。こういった技術や仕組みを持たなければ、企業の成長はありえません」、と述べています。著者は本書の中で、「本質」という言葉を何回も使っている通り、本質的にものごとを掴むことのできる能力が、今日の成功につながっているのではないかと思います。
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