日本ではOTCをコンビニエンス・ストアで販売できる規制緩和や、「移動薬局」のようなサービスを患者さんに提供したいという声が上がってきている。それが現実となる日もそう遠くはないだろう。一方、中国重慶市ではこのほど、初めての「汽車薬店」(自動車薬局)が誕生し、近いうちに営業を開始することになっている。
自動車薬局(以下、移動薬局)は、薬局チェーンを展開する和平薬房が運営する移動薬局。営業は、主に重慶市周辺の農村地や山間地域を中心に展開する方針だ。
重慶市は中国で最も大きな都市の一つである。人口は約3090万人だが、そのうち、農村人口が占めるのは7割近い。近年、中国の農村経済の急速な発展で生活水準が高まるとともに、医薬品に対する需要も日増しに増え、とりわけ都市部周辺の医薬品使用量が増加している。しかし、農村の医薬品市場は都市部のようなインフラ整備がされていないため、流通基盤や経営管理にも大きな影響を受けている。不法な個人経営による偽医薬品が農村市場に氾濫していることも問題だ。
このような社会問題を無視してはならないと考えた和平薬局は、「長い間の熟慮を重ねた結果、移動薬局が生まれた」と説明している。
移動薬局はGSP(医薬品の供給と品質管理に関する基準)に基づいて設置されており、所用設備や人員配置も政府が制定した規定に満たしているという。移動薬局内には抗生物質(処方せんなくても買うことができる)や解熱鎮痛剤などの常用医薬品を約500品目が備蓄されている。営業は3人体制(薬剤師1人、薬学専門員1人、運転手1人)で運営される。
移動薬局という初めての試みは、いったい中国で成功を収めることができるのだろうか。
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