医療費の高騰は日本だけではなく、中国でも大きな社会問題となっている。ここ数年、上昇し続ける医療費の伸びはやや鈍化しているものの、その伸び率は経済成長率に比較して依然高い水準にある。なぜ医療費が高騰しているのだろうか?
中国の医療費高騰の要因には、(1)高齢化、(2)疾病構造の変化、(3)多剤投与――の3つが挙げられているほか、次のような要因も考えられる。
◎医薬品価格の上昇
医薬品の原材料、補助材料の価格及び人件費などの引き上げによって、メーカーの製造コストも高くなり、それらの要因で医薬品の価格上昇につながる。
◎徴収基準の上昇
病院を含めた医療機関の初診料、再診料、ベッド料、検査費、注射費などがウナギのぼりに上昇している。経営難に陥った多くの病院は経営を維持するため、患者に“薬漬け、検査漬け”をするケースが多い。ちなみに、中国では医療サービスの価格基準、つまり日本の「診療報酬」に当たる制度はない。地方によっては病院が独自に規定するところもある。
◎輸入製品や外資系製品の増加
また、輸入医薬品の増加も医療費高騰の一因だ。さらに、外資系メーカーが現地で生産した医薬品の比率もますます拡大している。言うまでもなく、これらの輸入品や外資系製品の価格は高い。
◎高額医療機器及び新型医療材料の増加
高レベルな医療機器を導入すると、かなりのコストがかかるので、患者から高い検査料を取る場合も多々ある。実際、一般入院患者の医療機器による検査費用は、総医療費の20〜30%を占めているという。
これらの問題に対して、中央政府は「早急に解決したい」との認識を示しているが、現時点で有効な解決方法がないのが実情である。
|